東京都内のあるドライバーは午前8時ごろ、荷物の集配所である「宅急便センター」に出勤。午前中いっぱい配達した後、昼にセンターに戻って食事や休憩。午後は再び荷物を積んで配達や集荷に走る。午後に集めた荷物を各地に送り出すため、夕方にはセンターに戻り、夜は再び配達に出る。昼間に配達がさばききれないことに加え、夜間の配達指定も多く、午後8〜9時が特に忙しい。午後9時に仕事が終わらないことも多い。

ヤマトは2013年、ネット通販大手のアマゾンジャパンの配送を請け負った。
それまでは業界2位の佐川急便が契約していたが、撤退。
アマゾンは時間指定などサービスの要求水準が高い一方、対価が安いため」(業界関係者)とみられている。神奈川県内の30代の元ドライバーは「ヤマトがアマゾンの荷物を扱うようになって、体感では荷物が2〜3割増えたのに、人手が足りない」と話す。

 国土交通省によると、15年度の全国の宅配便の取扱個数は37億446万個と00年度の1.5倍近くに拡大。ヤマトは前年度比6.7%増の17億3126万個で、業界全体の半数近くを占める。

 これに対し、ヤマトのドライバーは全国に約6万人。
「社員を増やしているが、ネット通販がこれだけ伸びると追いつかない」。厚生労働省によると、宅配便など道路貨物運送業(中小型)の年間労働時間は2580時間で所得額は375万円。全産業の2124時間、480万円と比べ、労働時間が長く所得は低い。人口減少などを背景に建設業界や飲食店などでも人手不足に陥っているが、ドライバー確保も困難だ。

 通販業界のサービス競争が激しくなっていることも要因の一つだ。アマゾンは有料会員になると、2000円以下の買い物でも送料が無料になったり、東京23区などで注文から最短1時間で商品を配達したりする。楽天も都内の一部で最短20分で食品などを配達している。この結果、利用者は急増し、経済産業省によると、15年のネット通販の市場規模(個人向け)は13.7兆円で10年に比べて7割以上増えた。
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◇2割が再配達 コストかさむ
 厳しくなる一方の労働環境を受け、ヤマトの労組は春闘で荷物引き受けの抑制や時間帯指定の配達見直しなどを要求した。会社側も協議に応じる構えだ。

 ヤマトの配達時間指定は、午前中▽正午〜午後2時▽午後2〜4時▽午後4〜6時▽午後6〜8時▽午後8〜9時−−の6区分。
このうち比較的利用が少ない「正午〜午後2時」をやめることが検討されている。ドライバーが昼食をとる時間を確保し安全運転につなげる狙いもある。

 宅配便の増加とともにドライバーを悩ませているのが不在だった家への再配達だ。

 再配達は全体の2割を占め、コストがかさむ。
再配達を前提に家を留守にするケースも目立つ。再配達する場合、荷主(通販業者など)か受取人に追加料金を求める案も浮上するが、顧客離れも懸念され、実現の見通しは立っていない。
ヤマトは、仕事帰りなどに荷物を受け取れるロッカーを22年度までに駅や商業施設など5000カ所以上に設置する方針。ただ、利用者にどこまで受け入れられるかは未知数だ。

 ヤマトはこのほか、荷受けの総量抑制や値上げなどを検討している。アマゾンジャパンは「コメントすることはない」(広報)との立場だが、ある通販業者幹部は「ヤマトが荷受量を減らせば、他の運送会社に頼るしかないが、ネット通販の需要がさらに増えると配達しきれなくなる可能性が高い」と語る。

 通販業者も対策に乗り出している。セブン&アイ・ホールディングスは、傘下のコンビニエンスストア「セブン−イレブン」で通販商品を受け取れば送料を無料にするサービスの普及に力を入れる考え。ただ、コンビニでの受け取りは店に多くの荷物が置けないなどの課題がある。

 利便性に頼った利用者の姿勢も問われている。SMBC日興証券の長谷川浩史アナリストは「利用者も宅配便業界の労働環境の厳しさを認識し、再配達に頼らないなど意識を変えることが重要だ」と話している。http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/mainichi-20170304k0000m020168000c.html